レビー小体型認知症は、老年期に認知症を呈する病気の一種で、脳の神経細胞が原因不明に減少する病態の認知症では、アルツハイマー型認知症についで多い病気です。男性により多く見られ、その割合は女性より約2倍前後だろうと言われます。
レビー小体(Lewy Body)とは、元々は運動障害を主な症状とするパーキンソン病の脳の中の中脳と言われる部分にたまった異常な構造物をさす言葉ですが、レビー小体型認知症の患者さんの脳では、これが認知機能を司る大脳皮質にも広く見られることから命名されました。
これまでは、レビー小体はパーキンソン病に特徴的なものと考えられていましたが、最近では、パーキンソン症状のない患者さんでもみられることがわかってきました。
レビー小体型認知症の原因
レビー小体型認知症の原因は加齢による脳の変性によるものと考えられています。脳神経細胞内に「レビー小体」といわれるたんぱく質のかたまりができます。レビー小体(Lewy Body)とは、元々は運動障害を主な症状とするパーキンソン病に罹患した脳の中脳と言われる部分にたまった異常な構造物をさす言葉ですが、このレビー小体が大脳皮質の広範囲にできることでレビー小体型認知症となって現れるのだと考えられています。ただし、なぜこうした物質ができるのかは今のところ十分に解明されてはいません。
レビー小体型認知症の症状
認知障害と精神症状
レピー小体型認知症における認知機能障害は、アルツハイマー型認知症とは多少異なる面が見られます。
アルツハイマー型認知症では、初期症状として比較的間近な期間の記憶をとどめておくことが難しくなる「物忘れ」の症状から始まることが多いのに対し、レピー小体型認知症では、物忘れ症状だけでなく、初期から幻覚や幻視が現れることが多いのが特徴となります。
幻視とは、「壁に虫が這っている」「子供が枕もとに座っている」など、現実には存在しないものが現実のように見える症状です。さらに、「ふとんが人の姿に見える」などの錯視の症状もしばしば見られます。これらの視覚性の認知障害は暗くなると現れやすくなります。
また、気分や態度の変動が大きいのも特徴で、穏やかな精神状態から無気力、興奮、錯乱といった気分の変動をを一日の中で短時間に繰り返したり、日中に惰眠をむさぼったりすることもしばしば見られます。
運動機能障害
レピー小体型認知症では、パーキンソン病の症状と似た歩行障害や体の固さを伴う点になります。この症状があるため、アルツハイマー型認知症の患者さんよりも、転倒する危険が強く、寝たきり状態にもなりやすいと言えます。
自律神経障害
レピー小体型認知症では、自律神経障害も伴います。便秘や尿失禁などがよく見られる症状ですが、起立性低血圧等も見られ、日常生活の支障になることがあります。立ちくらみのように起立することで血圧の低下が起きる症状で、ひどくなると失神を起こすこともあり、この症状をきっかけとして歩行困難になる場合も見られます。
レビー小体型認知症の治療
レビー小体型認知症の治療は抗精神薬による精神症状のコントロールと運動症状に対する抗パーキンソン病薬、自律神経障害に対しての血圧コントロールなどが行われています。また、アルツハイマー型認知症の治療薬が効果的な場合もあり、試みられることもあります。
レビー小体型認知症により引き起こされる物忘れは、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きの低下が関与しているため、これを増加させる治療を行うと物忘れの改善はかれる場合があるので、早期に正確に診断することで治療効果が期待できる疾患ともいえます。