認知症の治療と治療薬

非常に残念なことですが、、現在でも認知症は完全に治癒させることはできません。現在の治療は、認知症を治すのではなく、残っている健常な機能を維持しながら認知症状の進行をできるだけ抑えることを目的として行われています。しかし、近年はアルツハイマー型認知症の治療薬(シンメトレル)が登場するなどし、治療内容と効果は格段に向上しました。それにともない、認知症のタイプによっては薬物療法を治療の中心とするケースも増えてきています。
薬物療法が行われ一方で、従来から行われてきた運動や食事の指導といった非薬物療法が効果的であることもわかっています。
認知症の治療は、薬物療法と非薬物療法をうまく組み合わせながら維持できるようにサポートしていくことが、治療成績を上げる事につながっていくのではないでしょうか。

認知症の治療薬

認知症はその発症原因は様々で、一説には70種類以上あるのではと言われています。認知症は、いまだに根本的な治療法は確立していないようで、薬物治療といっても対症療法的にならざるを得ないようです。

認知症の治療薬を大きく分類すると、脳循環改善薬と脳代謝改善薬に分けられます。両者では似たような名前ですが、その差異は

  • 脳循環改善薬は、軽い認知症や脳血管性認知症に対して、血流改善を目的に使用される薬
  • 脳代謝改善薬は脳を働かせたり、神経伝達物質を調整したりするのを目的に使用される薬

となっています。

これらの薬剤は、認知症専門の治療薬というわけではなく、通常、脳卒中(脳梗塞)の後遺症の改善に使用される薬剤です。認知症の場合、これらの薬剤を使用することにより、意欲の低下や鬱状態、不安感などが改善される場合があります。

以下に、実際に使用される薬剤の名称と特徴をあげておきます。

脳代謝改善薬を兼ねる主な脳循環改善薬

名称 主な作用 副作用など
セロクラール 脳の血液の循環をよくして,脳細胞の代謝を改善し,脳の働きが低下している状態を改善する作用があります。また脳の末梢血管内で,血液が凝固するのを防いで,血液の流れを確保する作用もあります。これらの作用によって,脳出血や脳梗塞の後遺症としてのめまい,頭痛,抑うつ,不安,いらだちなどの症状を改善します。 口やのどの渇き,吐き気,発疹などの過敏症状が起こることがあります。また,頭痛,ねむ気,動悸を感じたり,のぼせなどが起こることがあります。
ケタス 内服は気管支喘息に用いると気管支の過敏な反応をやわらげ,気道の収縮を抑える作用があります。また,脳の血液の循環をよくして,脳の機能を改善するので,脳梗塞の後遺症,脳の動脈硬化による頭痛,意欲低下などの症状に用います。点眼液は,眼のアレルギー症状を抑え,花粉症,アレルギー性結膜炎の症状を改善します。 内服ではむかつき・下痢などの胃腸症状,動悸,立ちくらみ,発疹などが,また血小板減少や肝機能障害が起こることがあります。点眼液は眼がしみる,かゆみ,痛み,結膜の充血,眼瞼のむくみ,発赤,異物感などがあります。
サアミオン 脳の血液量を増すなどして,脳細胞の代謝を改善し,脳の働きが低下している状態を改善する作用があります。また脳の末梢血管内で,血液が凝固するのを防いで,血液の流れを確保する作用もあります。脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害による意欲低下の改善に用いられます。 食欲不振,下痢,便秘などの胃腸症状や,めまい,立ちくらみなどが起こることがあります。

アルツハイマー型認知症の治療薬

アルツハイマー型認知症には、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を分解する酵素の働きを抑える作用のある塩酸ドネペジル(アリセプト)を用います。これによってアセチルコリンを長く脳内に残すことができるようになり、アルツハイマー型認知症の症状の改善が期待できます。

名称 主な作用 副作用など
アリセプト 脳内のアセチルコリン分解酵素に選択的に働き,その作用を阻害,脳内のアセチルコリンの量を増すことによって,記憶障害など,アルツハイマー型認知症の症状の改善に効果を示します。病気そのものを根治する作用はありません。症状の改善,進行の抑制を期待して使われる薬で,アルツハイマー型認知症が適応となります。 血中のアセチルコリンの量が増えるために不整脈,消化性潰瘍,気管支喘息を増悪させますので,そのような病気をもつ患者には用いません。また,吐き気,嘔吐,よだれ,発汗,急性膵炎,心不全,急性腎不全,肝炎や肝障害,低血圧,手のふるえや運動障害などの錐体外路障害,ときには悪性症候群が現れることがあります。アスピリンやそのほかの非ステロイド性消炎鎮痛薬といわれるものは,アセチルコリン系の作用を増強して胃酸の分泌を高め,潰瘍を増悪させる副作用を起こしやすいので,一緒に使わないでください。そのほか,胃腸の病気でよく使われる抗コリン系の薬も,この薬の効果を相殺しますので,併用に注意してください。逆にコリン系の薬との併用で,この薬の作用が増強され,副作用を来すおそれがあります。ときに横紋筋融解症から腎不全に至ることもあります。腎機能が悪い人は注意が必要です。

精神病治療薬

睡眠薬や抗うつ薬、抗不安薬、抗精神薬を用いることもあります。老人のうつ状態にはSSRIやSNRIが効果を発揮しているようです。

認知症で使用される抗うつ剤

  • デプロメール
  • ルボックス
  • パキシル
  • トレドミン
  • テトラミド
  •  
  • ルジオミール
  • テシプール
  •  
  • デジレル
  • レスリン
  •  

認知症で使用される睡眠薬

  • ベンザリン
  • ネルボン
  • サイレース
  • エバミール
  • ロラメット
  • ユーロジン
  • ハルシオン
  •  
  • ダルメート
  • ベノジール
  • インスミン
  •  
  • ソメニン
  • リスミー
  • レンドルミン
  •  

認知症で使用される抗不安薬

  • セレナーレ
  • レスミット
  • メレックス
  • ソラナックス
  • コンスタン
  • レキソタン
  • ワイパックス
  • メイラックス
  • リーゼ
  • デパス
  • アタラックスP
  • セディール

精神症状の改善薬

  • リスパダール
  • ルーラル
  • セロクエル
  • ジプレキサ
  • セレネース
  • ハロステン
  • レモナミン
  • ドグマチール
  •  
  • ミラドール
  • グラマリル
  •  

いずれにしても、これらの薬剤は医師の処方に従って服用するものですが、患者本人のみならず、その介護に当たっている方を含め、処方される側の知識として、薬剤の名称や大まかな薬効、また副作用などを知っておくことは決して損になならないでしょう。

アルツハイマー病をはじめ、認知症に対するより良い治療薬が製品化できれば経済的効果も非常に大きいため、製薬会社をはじめとする企業を巻き込んだ研究開発が、非常に活発に行われている事を考えると、認知症の治療薬も次々と革新的な著効を持つものも現れてくることが期待されます。

※1/20 通りすがりさんに記事内容の誤りをご指摘頂きました。ありがとうございます。(訂正済み)

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