クロイツフェルト・ヤコブ病|原因・タイプ・症状・治療

クロイツフェルト・ヤコブ病とは、プリオン蛋白と呼ばれる異常な蛋白質が脳に蓄積し、脳神経細胞の機能が障害され、脳に海綿状の変化が出現するプリオン病と呼ばれる疾患群の中の代表的なものです。プリオン病には、このクロイツフェルト・ヤコブ病のほかにゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群と致死性家族性不眠症があります。
クロイツフェルト・ヤコブ病は、1年間に100万人に1人程度の割合で発症することがわかっています。一般的にはあまり耳にする事がない希な疾患ですが、症状がアルツハイマー病に似ていることから、アルツハイマー病と誤診され、死亡後患者を解剖してみたところ本当の病はヤコブ病だったという例もあるようです。外見に現れた症状だけでは病名の判断が困難で、病理解剖によらざるを得ないところから、アルツハイマーと診断されている人も少なからずいるのではと危惧されているが、未だそういったヤコブ病患者の実態は不明のままになっています。

クロイツフェルト・ヤコブ病の原因

クロイツフェルト・ヤコブ病は、孤発性、医原性、遺伝性、変異型に分類されます。
異常プリオン蛋白質の中枢神経への沈着がクロイツフェルト・ヤコブ病の原因であるとの仮説が有力です。異常プリオン蛋白質そのものが増殖するのではなく、もともと存在する正常プリオン蛋白質を異常プリオン蛋白質に変換していくため、少量の摂取でも発症の可能性があると考えられていますが、この発症メカニズムも今のところ仮説の域を出ないようです。また、その感染経路も明らかにできないケースが多いようです。
医原性(米国に端を発し、ビー・ブラウン社(ドイツ)製造のヒト乾燥硬膜(ライオデュラ)を移植された多数の患者がこの病気に感染するという事故は日本を含め、世界的な問題となった。)・変異型の潜伏期間は約10年とされており、クールーでは50年を越すものも報告されています。

クロイツフェルト・ヤコブ病のタイプ別分類

クロイツフェルト・ヤコブ病は、原因や症状などにより以下のようなタイプに分類される。

◎散発性(孤発性)CJD
発症の原因が不明なもの。およそ100万人に1人の割合で発症するとされている。患者の多くは50歳以上の高齢であり、若年層の症例はまれである。
◎遺伝性(家族性)CJD
プリオンタンパクをコードする遺伝子(プリオンタンパク遺伝子)の変異を原因とするもの。プリオンタンパク遺伝子は第20染色体の短腕上に存在する。遺伝性CJDを引き起こす原因として、15種類の点変異と8種類の「オクタペプチドリピート」と呼ばれる挿入変異とが知られています。
◎変異型CJD
散発性CJDで観察される脳波の周期性同期性放電がみられず、脳の病変部に異常プリオンタンパクの沈着によるクールー斑などが広範にみられる等の特徴を有するもの。狂牛病の牛の内臓などを食して、牛海綿状脳症が人間に感染したものであると推測されている。以前は新型、あるいは新変異型とよばれていた。日本では2005年に1人目の患者が確認された。変異型の発症年齢は10~30歳代と若いのが特徴となっています。
◎医原性CJD
異常プリオンに汚染された医療器具の使用、CJD患者由来の硬膜や角膜などの組織の移植、患者由来の下垂体ホルモンの投与など、医療行為を原因とするタイプ。病気の型ではなく感染経路に注目した分類である。

クロイツフェルト・ヤコブ病の症状

異常プリオンが脳内に侵入し、脳組織に海綿状の空腔をつくって脳機能障害を引き起こします。発病後は進行が早く、1~2年で死に至る例がほとんどです。一般的には初老期に発病し、発病初期から歩行障害や軽い認知症、視力障害などが現れる。 なお、ヤコブ病は患者に接触しただけで感染することはないとされています。

クロイツフェルト・ヤコブ病の治療

クロイツフェルト・ヤコブ病の治療法は現在のところ開発されていません。従って、発症した症状に対する対症療法が主体とならざるをえません。具体的には、栄養の補給、関節拘縮、褥瘡、気道、尿路感染などに注意することで、健康状態を保つようにします。最近、クロルプロマジンやキナクリンなどの投与が行われ、一時的に症状の改善が得られたとする報告があるようですが、治癒するものではありません。
クロイツフェルト・ヤコブ病は、症状がアルツハイマー型認知症に酷似していることから、その治療や介護に対する負担は非常に重いものにならざるを得ません。一刻も早い、治療法の開発が切に望まれています。

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