ハンチントン病の原因や症状・治療法は?

常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせい)遺伝によって発病する神経変性疾患で、徐々に発症し進行する舞踏運動といわれる異常運動と、認知症(にんちしょう)や人格変化が現れてくるのが特徴です。

ハンチントン病という病名は、1872年に初めて「遺伝的な舞踏病」として報告を行った、米国ロングアイランドのジョー ジ・ハンチントン医師の名前にちなんでつけられました。
ハンチントン病は、中年期(35歳から50歳)の間に発症し、症状は次第に進んでいきま す。日本では特定疾患として認定されており、日本人には100万人に5~6人未満という稀な病気です。外国では特に白人に多く、10万人に10人程度の割合で存在しているといわれています。黒人は最も発症頻度が少ないと言われています。また、発症比率に男女差はありません。
かつては「ハンチントン舞踏病」と呼ばれていたこともあるようですが、全身の不随意運動のみが着目されてしまうため、1980年代から欧米では「ハンチントン病」と呼ばれるようになりました。日本では2001年から「ハンチントン病」の名称を用いています。

ハンチントン病の原因

患者に特有のハンチンチンが、切断されたDNAを修復する酵素と結びつき、働けなくしていることが原因のようである。東京医科歯科大学の岡沢均教授らによって発見された(2010年5月7日の読売ONLINE)
遺伝性疾患であり、多くは自身でも気づかない内に発症します。
親から子への遺伝率は高く優性遺伝ですので、片方の親が発病した場合子供に伝わる確率は1/2です。本症は男性でも女性でも見られる疾患であり、発症率に大差はありません。

ハンチントン病の症状

40歳前後に不随意運動で発症します。初発症状は、細かい運動がしにくくなったり、顔をしかめたり、手先が勝手に動いてしまう等の行動異常、落ち着かなくなったり、うつ状態になったりする精神症状等が現れてきます。
病気の進行に伴い、怒りっぽい、飽きやすいなどの性格変化が現れてきます。うつ状態や被害妄想などの精神症状、さらに認知症に似た症状も現れます。20歳以下や60歳以上の発症では認知症の症状が軽く、若年発症では固縮型といわれ、舞踏運動よりパーキンソン症状が目立ちます。
知能の低下も徐々に進んでいき、10~20年の経過後ついには重篤な荒廃状態に陥ります。精神症状が先行し、非行や犯罪などの反社会的行動として現れることもあるようです。

不随意運動(舞踏運動)

自分の意志とは無関係に生ずる顔面・四肢のすばやい動きが多くみられる。手先が勝手に動く、首を動かす、顔をしかめる、舌打ち、などが目立つ症状で、舞踏運動と呼ばれる。箸を使う、字を書くなどの細かい運動がしにくくなる、歩行が不安定になる、発音がはっきりせず会話がうまくできなくなる、飲み込みがしにくくなるなどの症状が出てきます。

精神症状・行動障害

一般的なの認知症と異なり、物忘れや記憶障害は目立たないものの、計画して実行する能力や全体を把握する能力などが障害される傾向が強いようです。また、怒りっぽくなったり、異様に同じことを繰り返すなどの性格変化や行動変化が目立つことも多いようです。ふさぎ込みなどうつ症状が強いと自殺企図が見られることもあるので注意が必要です。

ハンチントン病の治療

ハンチントン病の治療法ですが、残念ながら現在のところ根本的な治療法はありません。
不随意運動、うつ症状・神経症症状などには、症状を緩和するための薬剤の投与、精神面での援助など、対症療法的なものに限定されます。

若年性ハンチントン病

20歳以下で発症したケースを若年性ハンチントン病としているようです。

脳内で、運動と知能をつかさどる神経細胞が失われるために、成人期以降に発症するケースよりも、臨床像が多彩に現れるという特徴があります。
精神症状として、けいれん発作・知的機能障害が目立ち、不随意運動では舞踏運動の他にふるえ・激しい筋肉のびくつき・筋肉の異常収縮を示し、筋トーヌスは固縮を示す症例の頻度が高いとされます。

若年性ハンチントン病は発症時期の違いで2つのパターンに分けられます。

10代で発症した場合は、幼少期に他動などの症状が出るものの、大略大人のハンチントン病とほぼ同じ症状を現します。
さらに若い幼児期に発症した場合はその進行が非常に早いという特徴があります。大人の患者が10~15年かけてゆっくり進行するのに対し、幼児期に発症した場合はほとんどのケースで5~6年で寝たきりの状態まで悪化してしまうようです。

優性遺伝であるので、父親から遺伝した場合に、母親と比較して、表現促進現象(世代を経るに従い発症年齢が若年化する)がより顕著になります。
そのため若年性ハンチントン病の90%が父親からの遺伝であると言われています。

若年性ハンチントン病の治療も根本的な原因治療は確立されていません。現れてきた症状に対するリハビリや投薬といった対症療法が行われています。進行が異常に早いという特徴があるため、単なる対症療法ではなくこれからの病状を考慮した治療を進めていく必要があるといわれています。

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