認知症の症状

認知症は、脳の細胞が壊れていくことによって起こってくると考えられています。その症状はおおきく「中核症状」と「周辺症状」に分類されています。

中核症状

記憶障害

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人間の脳には、眼や耳から得られた情報を取捨選択し、関心のあるものを一時的に保存しておく「海馬」と呼ばれる器官と、重要な情報を長期間保存するための「菊の壺」とも現せる機能をもっています。記憶の壺に入れられた情報は長期間保存され、必要なときに必要な情報を取り出せるようになっています。
この便利な機能も、加齢とともに海馬の機能が衰えていき、一度にたくさんの情報をとらえておくことが難しくなってきます。また、捕らえたとしても「記憶の壺に」移すのに手間取ったりするようになります。逆に、記憶の壺の中から必要な情報を取り出す作業もスムーズに行われにくくなります。これは、通常は加齢に伴う「ど忘れ」として現れてきます。こうなっても一応は「海馬」が機能してはいるので、幾度かそれらの作業をしていくうちに、大事な情報はなんとか記憶の壺に収まってくれます。ここまではメデタシメデタシです。

ところが認知症になるとこうはいきません。認知症になると海馬の機能が極端に衰えてしまうので、捕らえた情報を記憶の壺に収めることができなくなってしまいます。新しく入ってきた情報を記憶できなくなり、さっき聞いたことが思い出せないといった状態になります。認知症がさらに進行すると、記憶の壺までが衰えてしまい、これまでに覚えていたはずの記憶まで消滅していってしまうのです。

見当識障害

見当識障害とは、現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握することができなくなる状態を指しますが、これも認知症の初期から記憶障害と並行してよく現れる症状です。
まず、時間に関する感覚が薄らいできます。時間の感覚が麻痺してくるので、予定に合わせた行動ができなくなる等の現象が出てきます。さらに認知症が進行すると、時間感覚だけでなく日付や年次まであやふやになり、今日は何日かと何度も聞くようになったり、服装に季節感が無くなったり、さらに自分の年齢がわからないなどが起こってきます。
場所や方向に関する感覚が薄らいでくると、慣れているはずの場所に行くのに迷子になる等の症状が出てきます。初めは方向感覚が薄らいでも、周囲の景色等をヒントにして道を間違えないで歩くことができますが、夜間など暗くてヒントがなくなると迷子になります。
進行すると、近所で迷子になったり、夜、自宅のお手洗いの場所がわからなくなったりします。また、距離感も鈍くなるのか、通常ではとうてい歩いて行けそうにない距離を歩いて出かけようとしたりします。
人に関する見当識は、認知症がかなり進んでから出てくる症状です。病状が進行し、記憶の壺まで衰えてしまうと過去の記憶がなくなってしまうので、自分の年齢や、周囲の人との関係がわからなくなります。80才の人が、30才以降の記憶を失ったために、50才の娘に対し、姉さん、叔母さんなどと呼んで家族を混乱させたり、過去になくなっている母親が心配しているからと、遠く離れた故郷に歩いて帰ろうとしたりします。

理解・判断力の障害

認知症になることで、ものを考えることにも障害が起こってきます。考える速度が遅くなったり、いくつもの情報を並行してうまく処理できなくなったりします。
一度に処理できる情報の量が減ってしまうので、情報が重なると混乱してしまます。
また、些細な事柄や、津本違う状況に対処できず混乱するようになります。例えば、お葬式での行動に不自然さが目立ったり、突発的な出来事、夫の入院などで混乱してしまったりで認知症が発覚することがあります。こういった状況では、本人が混乱したときに補助してくれる人がいれば日常生活は継続できることが多いものです。
さらに、観念的な事柄と、現実的、具体的なことがらが結びつかなくなるので、「糖尿病だから食べ過ぎはいけない」ということはわかっているのに、目の前のケーキを食べてよいのかどうか判断できないということが起こります。これは正常人でも日常起こりそうですが、「わかっているけどやめられない」のと違い、そもそも判断がつかなくなっているところにに差があるようです。また、目に見えないメカニズムが理解できなくなるので、自動販売機や交通機関の自動改札などがうまく使えなくなります。

実行機能障害

健康な人は頭の中で計画を立て、予想外の変化にも適切に按配してスムーズに進めることができますが、認知症になると計画を立てたり按配をしたりできなくなり、日常生活がうまく進まなくなります。スーパーマーケットでニンジンを見て、健康人ならば、自宅にはゴボウがあったのできんぴらを作ろうと考えます。ところが認知症になると、自宅のゴボウのことはすっかり忘れて、ニンジンと一緒にゴボウも買ってしまいます。さらに、夕食の準備ではそれらのこともすっかり忘れて、別の材料で全く別の総菜をつくったりします。後に残るのはニンジンと二つのゴボウです。こういうことが幾度となく起こり冷蔵庫には同じ食材が並びます。認知症の人にとっては、ご飯を炊き、同時進行でおかずを作るのは至難の業なのです。

感情表現の変化

最近はKYなどと言うはやり言葉がありましたが、認知症になるとその場の状況が読めなくなってきます。
通常、自分の感情を表現した場合の周囲のリアクションは想像がつきます。私たちが育ってきた文化や環境、周囲の個性を学習して記憶しているからです。さらに、相手が知っている人なら、かなり確実に予測できます。しかし認知症の人は、記憶障害や見当識障害、理解・判断の障害のため、周囲からの刺激や情報に対して正しい解釈ができなくなっているので、ときとして周囲の人が予測しない、思いがけない感情の反応を示します。

周辺症状

周辺症状には幻覚、妄想(物取られ妄想が典型的)、抑うつ、意欲低下などの精神症状と徘徊、興奮などの行動異常があり、最近ではBPSD(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれるようになっています。

抑うつ

うつ状態は、一般に認知症が高度になる以前にみられるのが普通です。認知症がはっきりする以前に、うつ状態が先行して見られることもしばしば見受けられます。

幻覚・妄想

痴呆の初期に目立つことが多い症状です。妄想の主題は現実的なのが特徴で、妄想の対象は身の周りの人が多いという傾向があります。特に、「物盗まれ妄想」は、老年期にみられる典型的な妄想のタイプです。痴呆老人が、物の置き場所を忘れてしまったために被害妄想が生じるという単純な理由で、説明が可能というわけではありません。妄想対象に対する強い攻撃性が見られ、ものが見つかっても自分の誤りを認めようとしません。「嫁が私の財布を隠した」等と言い張るのは良い例です。

せん妄

せん妄は、急性の脳障害に伴っておこる軽い意識障害で、判断力や理解力が低下し、しばしば幻覚や妄想があらわれて興奮状態になります。健康そうに見えても潜在的な脳疾患があるような高齢者に生じやすく、認知症患者ではしばしば認められます。意識障害のために見当識や認知能力の低下が起こり、同様の症状がみられる痴呆との鑑別がしばしば問題となります。
せん妄の症状は認知症と違い、時間単位あるいは分単位での急速な変化や、日内変動を伴いやすいのが特徴です。とくに、夕方から夜間にかけ起こりやすく、しばしば異常な興奮状態を伴います。徘徊したり、奇声をあげたりするなどのために、介護する人にとって大きな負担になります。

暴言・暴力

自分のなかの感情をコントロールできないことによっておこる症状です。介助のときや行動を制限するときに現れる傾向があります。暴言や暴力、大きな声の威嚇などが具体的な症状になります。また幻覚や妄想からおこる場合もあります。

徘徊・行方不明

一般的に、認知症が進行すると徘徊が顕著になって、帰る道筋が分からなくて行方不明になることも増えてきます。せん妄が関係している可能性も考えられます。自分の住んでいる場所が自分の家であることがわからなくなり、生まれた家や転居前の居宅など以前住んでいた家が本当の住まいだと思い探し歩いたり、物を置いた場所を忘れたり、トイレの場所がわからなくなり探して歩き回ったりします。一見、無目的に歩き回るように見えますが、その実、何らかの理由が存在することが多いようです。

異食

中度から高度の認知症にみられます。紙、土さらには、糞など、食物でない物を食べてしまうことがあります。脳の特定の部位の障害によって現れる「手に触れる物は何でも口に入れてしまう傾向(口唇傾向)」によると考えられます。
異食の前段階においては、廊下や家の中を徘徊している途中で、周辺に落ちているものを拾っては集める行為からそれを食べ物と誤認して口に入れる行為につながっていくと推測されます。

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Filed under: 認知症の基礎知識 — admin 10:01 AM